日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

読書記録:『繁盛する店が美味しいのだ』(1979年刊)

『繁盛する店が美味しいのだ』(桑原才介)1979年出版
 

 
日経流通新聞で昭和55年から連載されていた「味な経営店くらべ」の単行本。70年代末東京の「西洋料理」「中国料理」「朝鮮料理」「和食」「ラーメン」「カレー」「居酒屋」「パブ」「喫茶」145店をガイド。著者は「五感を総動員した味」「利益率1%を突き詰める経営哲学」「食文化がいっぱいつまっている」を繁盛店の条件、という。
 
「個人経営店を中心に繁盛店の分析」という主旨で、メニュー価格、客単価(昼・夜)をチェックしていて資料性高し。店舗のラインナップを概観しても、トニーローマ、津つ井、龍の子、おけい、つばめグリル、壁の穴、いもや、つな八、本むら庵、お多幸、とんき、鳥もと、いせ源、ナイルレストラン……エバーグリーンな名店の、昭和時代のグルマン記述は興味深い。
 
ラーメン部門は桂花、高揚(中野)、さぶちゃん、永福町大勝軒、チャーリーハウス、直久すきや橋店、なかよし(赤坂)、はせ川。古参ラーメンフリークならうなずく並びだ。
 
ちなみに、永福町大勝軒のラーメンは550円(44年後の現在は1130円)といったように、多くの店が客単価500円程度なわけだが、高揚は客単価1000円で、本むら庵と同レベル。1000円の壁を当時から軽々と越えていたのね。「最近のラーメン店には『手打ち』というタイトルがめったやたらと増えている」という紹介文の書き出しも、近年のラーメンシーンに通ずるものがある。