SORANOIRO本店、全部食べる
2019年3月、SORANOIRO麹町本店はグランドメニューをフルリニューアル。
6種のラーメンをラインナップした。
エントランスには鮮やかなSORANOIROブルーをバックに丼画像をディスプレイ。
1000円~のお店ですよ、と高らかに宣言している。
●ラーメン
まずは筆頭メニューの「ラーメン」から。2011年のオープン当初の「中華ソバ」から、『素良』のテイストを昇華させた「旨味出汁ソバ」と、こちらの筆頭メニューも何度かの変遷をたどってきたが、黄金トゥエンティーズの東京シーンを牽引するであろう今回の「ラーメン」は、ピュアな背脂が浮いた豚・鶏・貝のスープ。
多加水でもちっとした麺との絡みがよく、トータルバランスでグイグイと箸を進めさせてくれる。やさしい味わいながらもインパクトは残す、太刀の切れ味。
●ハーブの塩ラーメン
こちらは「赤坂うずまき別館」にインスパイアされたというグリーン・グリーンな塩ラーメン。ふんだんに盛られたハーブと野菜、フルーツ(いずれも日替わり)、ペッパーが充満香気を発している。
加減乗除でいえば加乗なラーメンだが、決して過剰ではなく、余韻も残る。スープの海辺は遠浅だが、いつの間にか香りの奔流に流されてしまう。食べ進めるうちにポジティブでパワフルになれる塩ラーメンだ。
●ベジソバ(画像は味玉入り)
ソラノイロが登場した2011年当時、「旨味ソバ」との二枚看板で業界をアッと言わせたフラッグシップメニュー。「麺、スープ、具材」のすべてに野菜を凝縮した、これぞベジのZIPファイル。
今回は2011年の創業以来、初めてのモデルチェンジとか。
以前はニンジンがメインだったというベジブロスにタマネギも加え、アサリの塩ダレと合わせた。前バージョンは甘みが好ましい印象だったが、キレが加わった新味も、もちろんいい。麺にはパプリカを練り込んであるのは前バージョンと同様、トータルバランスで唯一無二の味わい。
ギルトフリーを標榜し、女性人気も高い一品だが。たまにね、無性に食べたくなる。数ヶ月にいっぺんは「ベジソバ切れ」を起こす私だ。
●ビーガン醤油
ベジタリアンメニューにもいろんな定義があるが、ここSORANOIROでは「肉・魚・乳製品・はちみつを使用しない」ヴィーガンラーメンを提供する。グルテンフリーの玄米麺もあるが、ここはノーマルでいってみた。
昆布などの乾物+ベジブロスにグルテンフリー醤油のタレを合わせている、ということでファーストインパクトはさらりとした中味ながら、ラーメンらしい満足感は十分。浸透圧がピタリと合っているようなイメージで、五臓六腑への染み渡り具合が半端ない。
●ビーガン担々麺
東京駅店で提供されていたメニューのときは未食だったけど、本店のグランドメニューになったことで実食。ビーガン醤油と同じ醤油ダレ、ベジブロスに練ゴマ合わせて担々麺に。
ビーガン醤油はスッキリとキレで食べさせるが、こちらは担々麺らしいコクと旨みのストレートフラッシュ。動物系なしでこれだけの濃厚感が出せるとは……。
●マッスルラーメン
そして、2019年リニューアルでグランドメニューに加わったのが、こちら「マッスルラーメン」。プロテイン練り込み麺に鶏むね肉チャーシュー、玉子で動物性たんぱく質を、スープにはおからパウダー、豆乳で植物性たんぱく質をしっかりとブースト。1杯で80gのたんぱく質が採れるという、メガタンパクラーメンなのである。
皇居ランナーなどが多いこの地で、ランナーなどアスリートに向けた高たんぱくメニューを提供したい。それが宮崎店主のねらいだったらしいが、動物性たんぱく+植物性たんぱくをダブルで摂取するのがイイ! という「ダブルたんぱく」ムーブメントに乗り、ヘルシー志向の女性人気も高いとか。
私は特段アスリート志向ではないが、「時代の空気を食べる」という意味で、高揚感のある食体験。1980年の山下達郎はライド・オン・タイムを歌ったが、2020年のSORANOIROはライド・オン・タンパクで決まりなのだ。
6種のグランドメニューがどっしり構える中、創意あふれる限定、他業界とのコラボを意欲的に繰り出すSORANOIRO麹町本店。仕事場から徒歩圏内ということもあり、週イチペースで通いたいと思っている(と言いながら実際は月イチぐらいだけど)。
ラーメン業界、町中華シーンには多くの老舗があるが。現代東京でラーメンを食べ続ける私たちには、2011年にオープンしたこの店こそ、新たな「老舗」になっていくはずだ。