日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

半蔵門書店 経巡り

『ソラノイロ』のグランドメニュー、フルリニューアルにあたって、連日の半蔵門通い。麹町本店なので最寄り駅は麹町だが、私は半蔵門線ユーザーなので半蔵門駅から歩くのが基本である。花粉がない季節は平河町赤坂見附を経て仕事場へ帰ることも多い。歩いても20分程度ではある。

 

24時間フル営業が懐かしい渋谷南口店、ヒカリエ再開発と共に消えてしまった渋谷東口店、文系野球の総本山と名高かった東京ドーム店と、思い入れある山下書店はいずれもクローズになっているのが残念だが、ここ半蔵門ではいまだ健在なり、山下書店、なのである。

 

店舗外側での雑誌面展開、これぞ山下書店ウェイ。自動ドアをくぐると『妻のトリセツ 』特設ラック。2019年アタマの空気感だね。ビジネス街ということあって、入ってすぐにはビジネス書コーナー、右に入って男性誌総合誌、やや奥まって面積を取るのが女性誌といった布陣。ただ、私立中高が点在するというロケーションもあるのか、中学受験コーナーも存在感を発揮している。『二月の勝者 ー絶対合格の教室ー (1) 』をドーンと出し、中学受験エバンジェリストのおおたとしまさ氏著書、日経DUALの『中学受験をしようかなと思ったら読むマンガ 新装版 』といった基本線を押さえているあたり、父母として経験した書店員の目配りを感じる。

 

といった感慨を持っていたら、そのコーナーの直上の『山を渡る -三多摩大岳部録- 1 』特設コーナーに惹かれる。大学山岳部を舞台にした登山マンガ。『岳』以来、久々に山ものを読んでみるか、と元大学ワンゲル部の私は手にとった。あ、『山と食欲と私』も好ましいけど。マンガコーナーでは、2巻が出た『東京城址女子高生 2 』も抜いて雑誌方面へ。あ、これも『山を渡る』と同じハルタコミックスだったか。

 

最近、業界誌のライターワークでラーメン店の最新券売機事情にフォーカスしていることもあり、働き方改革と自動化を視野に入れた『月刊食堂 2019年 04 月号 』を。特集は「装置業態と省人化モデル 装置が主役のヒット店」。

 

坂口孝則さんの著書『ドン・キホーテだけが、なぜ強いのか?』が出たのは18年11月のことだったが、最新『週刊東洋経済 2019年3/30号』の特集は「ドンキの正体」。杉並にあったアーリードンキはドンキ渋滞を引き起こす集客力を持っていたが、確かに風呂上がりヤンキーカップルのまったりした空気感もあった。あそこから驚安をうたうメガドンキにいかにして進化したのか。来し方には興味そそられる。

 

ライフスタイル系に目を向けて、先月号に続き、『MONOQLO (モノクロ) 2019年 05月号 』も。ここ2年ほど本誌では仕事してないが、浅沼新編集長体制になって2号目の動向に注目。検証ラボなどインフラ整備でも注目されるが、本号の1特「暮らしにいい道具大全」のような、イマドキ都市生活者の日常に寄り添うような誌面作りがキモでもある。

 

ku:nel(クウネル) 2019年5月号 』は、特集が「36人の食スタイル」。カレーマニアの坂井真紀さんのキャッチーな写真がたまらないが、ファッション写真家北島明さんのマニアック料理三昧ページにも興味津々。料理本の熟読からリアル調理に落とし込んでいく方法論、書斎派グルマンとして共感する向きも多いだろう。
 
京都主張を控えてるので、『SAVVY(サヴィ)2019年3月号』の「京都でいま食べたいおいしいもん」特集、『CREA Traveller Spring 2019』の「あらためて京都」特集もゲッツ。2年前、若冲の本を手がけた私だが、まだ京都で若冲の絵を拝んだことはない。今回の出張、その機会があればいいが……?

 

新書には出物なく、何冊かタイムリーで興味深い文庫を抜く。「元号が変わる時、何が起こるのか! 知的好奇心を刺激するスリリングな一冊!」という手書きポップにヤラレて『天皇の影法師』。高校の社会教師に影響を受け、猪瀬直樹では『ミカドの肖像』あたりを読んだものだが、元号を切り口に天皇代替わりをクローズアップした本作は、まさに平成三十年三月に手に取りたい一冊。

 

昨今の歴史学者論争を念頭に置いて、在野の歴史学者諸行無常に思いを馳せたい一冊。『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』を上に乗せ、レジへ。著者の斉藤光政氏は東奥日報古史古伝文書の報道に携わってきたという人物。安彦良和氏描き下ろしというカバーが目を引く。

 

都内7店舗になったが意気軒昂、雑誌・マンガ・ビジネス書・文庫のトータルファイトで縦深の店舗づくりを続ける山下書店。ソラノイロのラーメンと共に、末永く通うことだろう。