秋冬のライター仕事まとめ
『現代国語例解辞典 第五版』。
この秋冬の目玉仕事といっても、実際に執筆したのは昨年の秋。数年がかりでフィニッシュする辞典ならではのスパンですな。担当したのは、コーパスを活用した、辞典内の言葉コラム255本。
コーパスを活用というのは、世の中の出版物で「空揚げ」「唐揚げ」どちらが多く使われているか、「ラーメン」を紹介するときには「醤油ラーメン」「味噌ラーメン」「塩ラーメン」「ご当地ラーメン」どの表記が多いのかとか、まあそういうことです。ちなみにラーメンはすごく意外な結果。紙の辞書の将来あれこれ言われていますが、皆さんも現例解、引いてみてください。
雑誌ものでは、これか。
うかうかしていたら、もう次の号が出てしまったw
久々に携わったDIME誌。麺なしラーメンのトレンドをコラムにて。
秀ちゃんラーメンのラーキャベ、舎鈴のつけ肉、立川マシマシの豆腐を取り上げ。
識者にはフードジャーナリストの山路力也さんにご登場いただきました。
今シーズンは、晋遊舎の完全ガイドシリーズは少なめの参画。
『保険完全ガイド』は、ここ最近やってる金融・保険ものの集大成。このムックのクレジットを見たエージェンシーから問い合わせがあって金融コンテンツマーケティングやったりと、いろいろ広がりがある仕事でもありました。
『ネット通販完全ガイド』は沢田さん、小越さん、風間さんに実食いただいてのお取り寄せプレミアム商品特集が印象的。風間さんスタジオで帰りしなに、東京震度7の緊急地震速報誤報に震撼しましたっけ。
『旅行完全ガイド』は毎度おなじみ、浅沼さん差配。このシリーズも7冊目ぐらいになるんだっけか? ホテル評論家瀧澤さんに取材した「ホテルのお得な泊まり方」などの企画。
PR誌、業界誌系では、マンション不動産ものが一回休み。元宝島~リクルートの後藤氏が編集長として降臨したCHINTAI『わんだふるオーナーズ』の連載2回目。賃貸物件の「窓」をテーマにした巻頭エッセイ。六義園ビューのお部屋。私が東京に出て初めてのデートが六義園だっただけに、いろいろ感慨深い。あの子は元気かしらね。
ドカンとやって量も質も傾注したのが各種オウンドメディア。もう弊社のキャッシュポイントの一つの柱になっている気がする。署名入りあり、佐々木圭一さんを取材したW佐々木ものあり。
パートナーが売却に反対......どう足並みをそろえたらいい?
それから、これもレギュラーでやっているWebコラムもの。企画創発あり、恋愛抒情ひねり出しあり。ライター頭をこねくり回して今日もまた、日が暮れるというわけで。
- スゴレン・オトメスゴレン 恋愛コラム執筆
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パッケージに見る「麺リフト」研究
西友のカップ麺売り場をリサーチしていたら、PB「みなさまのお墨付き」に、何だかすごいパッケージを見かけた。
北斎の凱風快晴もかくや、という富士山型の麺リフトが圧巻である。
「大盛り焼そば」らしく、麺のムチムチ感がダイナミックに活写されており、思わず唸った。
同レーベルの「ソース焼そば」は、シンプルに重心が安定した低層タワー型。浅草十二階、またはヘドラの直立ぶりを思わせる。
最近はカップ麺のパッケージも麺リフトが流行っているのか。麺売り場をさらに物色してみた。
袋めんは、やや上から見下ろした華厳の滝型。フリークのラーメン撮影法の一つ「林撮り」(林撮り詳細は拙稿を参照)とも似ている。
第3回 「情報を食う」の、その先へ――TOKYOラーメンGeeksの今 | M/M memento / moment
ズルズルっと麺を啜る己を想像し、思わず手が伸びるというサブリミナル効果をねらったものだろうか。
西友PBパッケージは綿密に考えられているようで、バリエも多彩。袋めんパックでは、麺オンザレンゲでのリフト、という珍しいカットも使用されている。
西友PB以外で麺リフトをフィーチャーしているのは日清食品でもあった。
こちら「デカブト」はボリューミーなカップながら、歯ごたえムッチムチそうな太麺をしなやかに流している。
コンビニなどの販促で、人の目線は左~右、右で止まって下段左~右へと動く「Zの法則」というセオリーがある。このデカブトの低い陣形での麺リフトは、パッケージ内でZの法則を体現している、と言えるのかもしれない。
日清の麺リフトといえば、外せないのが「どん兵衛」シリーズ。ストレート製法による麺の流れを写し取っている。
私が雑誌の麺リフト画像ではこの人、と推す西崎進也カメラマンが作るような、実に丁寧な麺線だ。西崎カメラマンの料理写真は『TRY』、『おとなの週末』などで見られるので、ぜひウォッチしていただきたい。
ちなみに、私が携わっている『TRY』では、麺リフトを通称「麺上げ」カットと呼ぶ。2016年版はぐっと使用率を抑えたが、味噌や濃色のスープなど、麺が見えにくいラーメンの場合は適宜採用している。
最も、フードコーディネーターのスタイリングが入るわけではなく、立ち合いライターが手探りで行うため、麺線の整いはそこまでハイレベルなものは要求できない。
ただ、一点だけ留意してもらっているのが箸のポジショニングだ。
ごくたまに、箸が手前にきてしまい、麺の流れを断線してしまっている麺リフト画像を見かけることがある。これ、実に残念。
麺の美しさ、質感をできるだけ再現しようというのが麺リフト画像のねらい。
商品パッケージでも、ラーメンガイドブックの誌面でもそれに変わりはないのである。
もし、校閲ガールがTRYをチェックしたら
さる10月26日、今年も『第17回 TRYラーメン大賞 東京 ラーメン・オブ・ザ・イヤー』が発売になりました。新店部門の編集として、不肖の私めも携っております。
第17回 業界最高権威 TRYラーメン大賞 2016-2017 (1週間MOOK)
- 作者: 講談社
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/10/26
- メディア: ムック
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審査員の審査によって順位が厳正に決められるTRY。気鋭の皆さんの徹底的な食べ歩きリサーチと妥協なき投票が根幹をなすわけです。
また、掲載写真のクオリティも特筆もの。美麗な麺線を、クリアなスープを、真摯な職人像をカメラマンたちが活写してくれています。
そして、縁の下の力持ちとしてページの質を担保しているのが校閲です。マストは朱字で、そして校閲的な疑問が黒鉛筆で。ゲラにはめっこりとチェックが入ります。TRY制作上には審査会、取材・撮影といくつも難関がありますが、この校閲ゲラチェックが、最後の一山とも言えるのです。
校閲さんの緻密なチェックぶりは、まあ、ドラマにて石原さとみが感じたり何だりしているわけですが、TRY誌面にもその一端は感じられます。
たとえば、味噌ラーメン。「噌」という字についてです。
同じ口偏でも、「曾」が本字、「曽」は許容字体。校閲ガール的には違うわけで。
それはラーメン店でも使い分けられています。
校閲さんは看板、暖簾の字体と齟齬がないか、ビシバシチェックをくださるんですね。
熟読玩味、アウトプットの精度を不断に高めていかなければならない。
誤植やミスに膝がくずおれたこと少なからぬ私は、校閲さんの黒鉛筆を見て背筋を伸ばし、また赤フリクションを手に取るのです。
ライター編集、肩書き問題
2004年 下北沢吉祥寺 ラーメンの旅
過去ワークスを整理していたら、2004年発刊の吉祥寺、下北沢ガイドブックが出てきた。オズマガジン増刊。まあ、よくある街歩き系ガイドブックです。
私はこの両ムックで、ラーメン特集を担当しました。
TRYはもちろん、石神本の編集にも携わる前で、一般情報誌のラーメン特集を散発的に手がけていた程度。特に評論家陣の監修を仰いだわけではなく、足で歩いてリストアップ~取材という流れで進めました。
12年を経て見てみると、吉祥寺も下北沢も、いろいろ興味深い並びですね。
まずは、下北沢。
- ラーメン・キッチンあさの(閉店)
- 珉亭
- りきまる(閉店)
- 天手毬 下北沢店(閉店)
- らーめん千石屋 下北沢店(閉店)
- らーめん やじるし
6店中4店が閉店という夢の跡。下北といえば、の『一龍』が載っていないのは、取材拒否ではなく、この頃長期休業中だったかと記憶しております。
『あさの』は小林カツ代さんプロデュースで、いわゆる「女性向け・カフェテイスト」の店の走り。320kcalという低カロリーと野菜たっぷりのヘルシー路線、いわゆる「マーケ目線で考えた女性向けラーメン」を提供し、まあこの系統のお店の大半がそうだったように、早晩クローズしてしまいました。
『珉亭』は「江戸っ子ラーメン」を紹介。現在750円の同メニューが当時は650円でした。『りきまる』は個人的にも思い入れある店。90年代の東京・九州ラーメンといえばここという感があります。付近を通ると、いまだに思い出しますね。『天手毬』は、わりと最近まであった担担麺専門店。『千石屋』は『千石自慢ラーメン』の系列。ぎっとり系で下北の客層にも合っていそうな感がありましたが、今には続いておらず。『やじるし』は塩つけ麺のアーリー提供店にして、炭火炙りのチャーシューなど、トレンドファクターをいろいろ取り入れていた。分かりにくい立地ながらいまだ健在。
続いて、吉祥寺編を見てみましょう。
こちらも激変だな……。
リードには「駅から徒歩15分圏内に30軒以上がひしめく」とありますが、今だったらもっとありますよね。こちらも『一二三』が載ってないのは何だったか……『旅人の木』とのカブリ回避でニューオープン系に重きを置いた、ですかね。
掲載店はこちら。
- らーめん さくらい
- 旅人の木(荻窪に移転)
- ぶぶか
- 洞くつ家
- 麺々亭 火の国(閉店)
- らーめん 人げん万ざい(閉店)
- かぎや(閉店)
- めん弥(現『昆鰹 優味ん』)
往時のまま営業しているのは3店。
『さくらい』は70年代創業でいまだに地元人気高いお店。子どもラーメンもあって、ファミリーは重宝しますね。取材時には製麺所の直営店という意外なバックボーンに驚いたものです。
『旅人の木』は『一二三』で修業した店主が独立。そば粉を練り込んだ麺と茎ワカメが懐かしい。『ぶぶか』は、言わずと知れた油そば。今は北口にも出店しましたね。『洞くつ家』は安定の家系でいまだ健在。山クラゲトッピングは今はやってないのかな?
『麺々亭 火の国』は、今は『蒼龍唐玉堂』になってます。創業25年を経て完成させたスープ、豚バラ角煮のムンローメンがウリでしたが。『人げん万ざい』は、サンロードを突っ切って左にちょっと曲がったところに。今は『味噌らーめん屋 宏ちゃん』という店が営業中。
『かぎや』は美味かった、ホント美味かった。中村獅童がバイトしてたとかで、店内にはよく歌舞伎のポスターが貼ってありました。ほんのり甘い醤油味に、やーらかい挽肉トッピング。味玉もマスト。卵をスープに使うことで澄ませている、と女性店主に聞いたような気がするが、あれはどういうことだったか。荻窪『めん家』と並んで、思い出の中のラーメンですね。
『めん弥』は店主のキャラクターが鮮烈。その後、『昆鰹和ジアン』『昆鰹 優味ん』とリニューアル改名を繰り返し、トムヤム味噌つけ麺とか、当時から開発して多メニューを開花させている感じ。
ちなみにこの当時の石神本をひも解いてみると『鳥料理 有明』が登場するも、まだ鶏白湯というネーミングはなし。煮干しの『中華そば屋 伊藤』、特濃『麺家 うえだ』も初登場しているのが興味深いところ。
『TRY』では大賞が『中村屋』、新人大賞が『きら星』、優秀新人賞には『はやし』も名を連ねてますね。オリジナル部門では『鮎ラーメン』が2連覇。ゼロ年代初頭の雰囲気ひしひし。
ラーメンも人も流転、離合集散だなあ、と思う04-16、
12年の年月であります。