日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

らーめん 麺くま@久我山 開業

久我山駅北口出て正面すぐ。

『らーめん 麺くま』が2017年2月15日にオープンした。久我山病院そばの『中華料理 熊』の支店、というかセカンドブランド、ラーメン専門店という位置づけになるのだろう。

 

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看板には拉麺 麺くま、らーめん 麺くまが混在。幕もそうなので、やわらかい「らーめん」イキなのかな。

 

入ってすぐに券売機。基本ラーメンとネギラーメン、チャーシューメン、そしてワンタンとハーフ味玉入りの推しメニュー「熊らーめん」という並び。開店祝儀で熊らーめんをぽちっとする。

 

席は厨房に背を向けるスタイルのカウンターのみ。水もラーメン受け取りも返却もセルフという方式。券売機にも酒メニュー、つまみはなかった。立ちそばのようにさっと食べてさっと出る利用が想定されているようだ。

 

オープン初日ということで本店の店主夫婦がアシストしていたが、基本は若い店主がワンオペでも回せるように考えているのだろう。

 

後ろを向いて厨房を注視していると、平ざるで麺上げして、熊らーめん着丼。おかみさんが「今日だけだけどね(笑)」と持ってきてくれた。

 

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ダークウッド調のカウンターに映える白丼。きちっと丁寧な盛り付け。これも本店仕込みの端正さ。メンマとチャーシューは本店と似ているルックス。ただ海苔は大判でぶさっと刺さっており、青菜とあいまって正道のラーメン感を担保する。ワンタンはみちっと粒立って肉感的。

 

麺は白っぽい中細麺、これも本店と同じっぽい。小麦感、噛みしめ感よりは、つるりと喉越しに重きを置いているというか。

 

そして、スープ。塩味、旨みを強く感じる。本店の煮干しあっさり素朴な味わいよりは、駅前スピード感、店主の若さが立ち昇る意欲系。表面にはネギ油か、まったりしすぎないぐらいにキラリと。これは本店譲りかな。

 

トレンドラインを盛ってくるのではなく、安心の熊が、駅前で。パパ友とは「軽飲みにいいかな〜」なんて話してたけど、まあそれはそれ。本店の味わいが、さくっと食べられるのは嬉しい。

 

久我山のラーメンフロントラインが、また厚みを増した。

 

 

 

 

 

護国寺 MENSHOへの道

ラーメンクリエイター庄野さんがオープンさせたMENSHO@護国寺。レセプションにお招きいただき、参上した。

 

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TRYで缶詰めになってた講談社をスルーして大塚警察署越えた、あそこ。そう、あのちゃぶ屋があったところ。私も幾度となく通い、仕事でも故武内伸さんと加藤鷹さんの「しお/ラーメン:吹き対談」を実現させた思い出の地でもある。

  

そんな歴史的ラーメン地層が折り重なる場所に、最先端のラーメンがやってきた。製麺スペースがたっぷりとられているのはもちろん、後楽園MENSHOにもあったラボに釘付け。ラーメン本が並ぶデスクはグループのビジョン、展開を語り合うスペースにもなろう。

 

おっと、製麺室には何と石臼も設置。日本蕎麦屋では見たことあるが、なかなかインパクトあるマシンだ。

 

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潮らーめんをお願いする。

 

塩ではなく「潮」というワードをチョイスするあたり、庄野氏の意欲を感じる。全国各地の様々な海塩を使用。海の恵みを滋味を一杯にこめようということだろう。

 

 さて、着丼。ご覧のように、丼はアバンギャルドな形状。紅の豚のマダムが、こんな形の帽子をかぶっていた気がする。

 

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アニマルフリーとのことだが、鯛の香りがふわっと典雅に香る。潮スープは実にやさしく、まるい。

デコルテのような丼外縁には粒々と黒いあんこのようなもの。これはお品書き見ると、カラスミと、炭化したネギを粉状にして纏わせたホタテとのこと。中盤、しなやかな麺につけて口中に入れると、食感も味わいも段階変化。たのしい趣向。

後半、丼から直接スープを啜ろうとしたがこのカーブはなかなか至難であった…。

 

この店のキーワードは現代的であり、そして普遍的でもある。

 

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Farm to Bowl……生産者とラーメン丼を直結させようという志。

 

サステイナブル……経産豚を食材に起用し、フードロスにも目を配る。持続可能な食の未来を展望する目線。

 

ガストロノミー……ラーメンをエレメントに分解し、一つの料理として構築していこうとする気概。

 

未食のつけ麺も、そして今後加わるという醤油ラーメンも、もちろん楽しみだ。ラーメンクリエイターの次なるプレゼンを待ちたい。

 

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啜る快感、昆布水つけ麺

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『Ginger Noodle Spot 角栄』にて、初の「ツケメン」いただきました。

新潟長岡生姜醤油ラーメンの「ラアメン」も個人的五ツ星ですが、

ツケメンがまた、たまらない仕上がり。

 

麺が昆布の水出汁に浸かって出てくる昆布水つけ麵。

この水出汁が超・粘度たっぷりで、啜り上げる時のズルズルッ!

という快感がたまりません。ヌーハラだか何だか巷間言われているようですが、

これは啜り上げてこそ、魅惑の味世界が愉しめるわけで。石神氏が昆布水つけ麺を初めて紹介した『石神秀幸 神ラーメン2012』の『らぁ麺屋 飯田商店』テキストから引用してみましょう。

 

ツユに浸せば、未知の扉が開かれる。

水出汁の粘度が強いのでツユと一体化せず、昆布と鶏の味がどちらも失速せず加速したまま飛び込んでくる。麺を勢いよく啜ると水出汁とツユがホイップされて味が程良く溶け合い、泡が粘膜をなぞり未体験の心地良さ。

 

脳内でまた思い出してしまった……。

これまで何軒かで昆布水つけ麵を堪能してきましたが、

うまみの掛け算相乗効果はもちろん、粘度の高い昆布バブルが醤油つけ汁と混ざり合いながら口中にスライダーする、あの昇天のひと時がたまりません。

 

男子はやっぱりチュルチュル麺啜るのが好きなのは、

フロイト言うところの口唇性欲が……あるのかどうかわかりませんが、

とにかく快楽の極み。

 

 

 

 

 

「コンビニ」という略称はいつから使われているのか

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うちの近くにある酒屋の看板で「コンビニエンス」というショルダーが気になった。

 

「便利」という意味だけじゃなく、何かひっかかる…モヤモヤしてたがついに思い出した。原秀則先生の浪人マンガの名作『冬物語』のワンシーンで、主人公が「ここならコンビニエンスも近いし便利だよね」的なことを言うセリフがあった。

 

そうなんだよ、コンビニは昔「コンビニエンス」ゆうてたんだよ!

 

「冬物語 原秀則」の画像検索結果 「冬物語 原秀則」の画像検索結果

実家にあるから、今度再読してみるか。書影も、水野真紀宮崎ますみの映画版も時代だなあ。90年(80年代と90年代の狭間感)の空気。

 

さてこの『冬物語』、連載されていたのは87~90年だから私にとっては中三~高三というミドルティーン直撃マンガ。予備校生、大学生という農村部にはいない層が繰り広げる恋愛模様。うちの町にもコンビニ的な店はあったが、「ホットスパー」とかいかにもローカル系な店舗ばかり。セブンイレブンいい気分、明るいねあったかいねサンチェーンとか、深夜ラジオのCMで聞いて思いを馳せていた。80年代中葉、地方の一少年にとって「コンビニエンス」は都市カルチャーの象徴であったのである。

 

で、その「コンビニエンス」問題。

泉麻人氏は、1980年代後半に「コンビニエンス物語」なるルポをいとうせいこう氏と連載していたそうだし、調べてみたら90年には『ウッチャンナンチャンコンビニエンス物語』(テレビ東京系)なるドラマもあった。『冬物語』セリフもそうだが、バブル期には、まだ「コンビニ」という略称が一般化していなかったことが推察できる。

crd.ndl.go.jp

 

 

上記の事例によると、「コンビニ」という略称は90年代初頭から広く使われ始め、95年ごろには定番化していたようだ。4文字短縮で一気に人口に膾炙したイメージのある「コンビニ」だが、1号店が登場したのは1974年のこと。

 

20年近くかけ、じわじわと生活基盤に浸透していったのだね。

 

うなぎラーメン

アプリ「ラーメンGoGo」のミーティングに参加した時、特典として珍袋麺のつかみ取りがあった。

 

なぜかその場の最年長ということで先陣の余禄に預かった私が手に取ったのは、この「うなぎラーメン」と「トマトラーメン」だった。

 

インスタント忌避の我が家ではなかなか食べる機会なかったが、

深酒翌日家人留守子供看病台所立飯

という、格好のシチュが到来。

 

福岡柳川の魚問屋夜明茶屋謹製、蒲焼風スープが陽の目を見る時が来た。

 

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カップ麺にはいろいろ一家言あるが、袋麺といえばサッポロ一番しょうゆ、マルちゃん冷しラーメンぐらいにしか拘泥のない私である。

 

うなぎラーメン…

際物かと先入観でサッと作ってキッチンで平らげる。

 

粉スープがサッポロ一番の3倍ぐらいという盛り、別添え山椒もどん兵衛の倍くらい。

 

濃そうだなーと思ったが、あら不思議に嫌味のないコク。かけそば状態でも美味しくいただけたのは、乾麺に合うウナギアロマがふわっと香ったから。

 

蒲焼のにおいをおかずに飯が食える、江戸っ子かと。うなぎてぇのは、いつ匂いを嗅いでもいいもんでございますな。