日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

ラーメンショルダー 古今東西

ラーメン特集を手伝った「DIME」の見本誌が送本されてきたので、ぱらりと見ていたら、ある傾向に気づいた。掲載店のショルダー(麺屋武蔵であれば“麺屋”の部分ってことね)が実にうまいこと重複なし、なのだ。

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麺劇場
らぁ麺
麺処
中華そば
麺屋
つけ麺
鯛塩そば
麺家
ローストビーフ油そば
まぜそば
noodle kitchen
辛ラーメン専門店
ラーメン
カレーラーメン専門店

 「麺劇場」と言ったら唯一無二ですぐに分かるけど、「らぁ麺」というのもかわいく、そしてまた食欲をそそる。「らー麺」「らぁめん」「ラァメン」と変化系もいろいろあるしね。

「麺処」「麺屋」は「麺家」とも同じ科という印象。青木健さん提唱の「そば系」に多く見られるし、『ラーメンと愛国』で速水健朗氏が言っていた「ラーメン屋から麺屋へというパラダイムシフト」に連なるショルダーだろう。和の趣も感じさせ、なおかつ本格派の矜持も静かに感じられるというか。

「麺匠」もこの系譜で、求道よりラボに振れると「麺工房」というのも有力だ。

「noodle kitchen」はカフェを想起させる、雑誌で言うたら「&Premium」的な感じやね。ソラノイロ、蔦を嚆矢として、英字ショルダーも市民権を得てきている。

「鯛塩そば」のように、フィーチャー素材を冠するのも目立ってきた。最近は「真鯛らーめん」てのも登場してる。そういえば、蓮沼さんの『我武者羅』も創業時は「鯛だしとんこつ」だったよな。鯛以外の食材ショルダーは何があったかな…

などなど、思索の連鎖はつきない。文化系ラーメン文献派としては、過去のラーメンガイドブックアーカイブを紐解いてみたくもなるわけです。青木さんあたりとは、このショルダーの並びをつらつら見ながら一晩語れそうだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソラノイロS&Mファイナルツアー

『ソラノイロ』の2号店『ソラノイロ Salt & Mushroom 』が2月5日をもって別業態へのリニューアルのために一時閉店、とのこと。この2号店、オープン直後に取材したり何だりでいろいろと思い出深い店。最後にレギュラー総なめするか、と思い立って一人3DAYS興行開催。
 
やっぱり、まずは「キノコベジソバ」から。本店のベジソバともまた違うキノコッシュなアプローチで、食感香りとも非常に楽しい。久々に食べて人参ピクルス、お麩クルトン、焼きチーズなど脇を固める具材群にも目がいった。椎茸パウダー練り込み麺もいい。
 
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2日目は「生卵入り ソラの肉ソバ」

夜21時前に駆け込んだら、肉ソバ最後の一杯。キノコベジソバは売り切れとなっており、券売機でじっとにらんで踵を返す後続の方もいらっしゃった。

さて、こちらの肉ソバはあのメニューのインスパイアにしてスタイリッシュなテン年代解釈の肉ソバ。ラーメンらしい雑味をスッキリと昇華させつつ、肉の存在感、醤油の香りと旨みを存分に味わわせてくれる。箸でなかなか切れないタフな卵もねっとり官能的。モヤシもトッピングしたら良かったかな~。そして最終日へと続くわけで。

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そして2月5日、最終日。ディナー開始の5分前にたどりつくと、先客5。皆さん思いいれと期待感をこめて開店を待っている。
そわそわしながら食券機で「塩煮干ソバ」をポチリ。こちらはピロピロっとウェービーな麺が、白醤油×天外天塩の塩ダレ+伊吹煮干+真昆布スープにたゆたう逸品。まさに滋味深いスープであります。
 
 
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同じ店を3日連続で食べる、というのも私のラーメン人生で恐らくは初めてのこと。
限定の「スタッフ中村のチリコンラーメン」や「ビーガンキノコベジソバ」もいきたいところだったが、あと2日必要だった……しかしこう考えると、味の組み立ても盛り付けもガラリと異なるレギュラー3種をしっかりとオペレートし、なおかつ限定も随時繰り出しているんだから、スタッフの地力たるや恐るべしである。
 
リニューアル後は、そんなスタッフを率いて、なおかつ味作りに才を発揮する宮崎氏がまた独自のステージを見せてくれるそうだ。今から楽しみでなりません。
 
 

 
 
 

新春スイーツ紅ほっぺ

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www.tokyu-dept.co.jp

 

昨日から始まった、東急東横店の「紅ほっぺスイーツフェスタ」。

レストラン街、フードショー、のれん街の三段構えで展開中。マークシティ下、のれん街エントランスには静岡直送販売ブースもしつらえられている。

 

通勤ルートの途中なので、思わず途中立ち寄り駆け込み。

フードショーの〈新宿高野〉「紅ほっぺドーム」も捨てがたいが、やはりここは「和」だろう。

目をイチゴマークにしつつ、のれん街を回遊。

 

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ポスターには限定個数の記載はなかったが、お姉さんに聞いたら「1日15個ぐらいですね」とゆーので、清月堂本店の

紅ほっぺの椿通り

を購う。

 

こしあんを包んだ羽二重生地の餅が、まさに天使のほっぺ、その上に紅ほっぺ。

椿の葉も季節感たっぷりである。

紅ほっぺは甘みにも酸味にも傾斜せず、中庸の味わいながら、果肉のしっかり感が秀逸。しっとり餡とのコントラストは口中調味で絶品でありました。

料理写真の小ワザを考える

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都内某所で、終日スペシャルティコーヒー撮影。

ペーパードリップの抽出フローを何十回と繰り返すわけだが、これは私のような立ち会いライターでは務まらない。コーヒー粉にただお湯を注げばいいというわけではなくて、一定の太さの流湯を注ぎ、時間を置いて蒸らし、2投目、3投目と注ぐことで粉をぷくらーっと膨らませなければならないからだ。細口注ぎ口のコーヒーポットを振り、ウルトラ水流のように糸湯を繰りだせる凄腕珈琲職人のお出ましだ。

 

ちなみに、この膨らみは二酸化炭素炭酸ガス。コーヒー豆の香り成分はこの炭酸ガスに含まれている。焙煎後のコーヒー豆は酸化が進み、どんどんこの炭酸ガス、つまり香りが失われてしまう。ガスが発生してペーパー上で綺麗に膨らむということは、豆が新鮮という証しでもあるのだ。

 

ペーパーを伝ってサーバーにちーっと垂れていくコーヒー液。深みのある褐色が美しい……と、おもむろに珈琲プロが持ってきたのはチャッカマン。カチッと着火し、カップの表面をなでていく。

 

なるほど。こうして、液面にぷくぷく浮いた小泡を消していくわけだな。

 

料理写真家の越田悟全さんは、『プロフェッショナルの料理写真』で

 

コーヒーの液面をよく観察すれば、煎りの深い豆だと表面についた脂が液面に浮いているのに気がつくでしょうし、コーヒーの泡の状態に着目すれば時間の経過を心理状態の変化に置き換えたポエジーな表現ができるかもしれない。

 

と語っていたが、今回の撮影は一回性のシズル感よりもオールフラットで同一状態での撮りおろしがマストだ。表面の泡も取り除きたい、ということでチャッカマンのご登場と相成った次第。料理撮影ではライティングの微細な加減が生命線になるが、時には生活シーンではありえない理想の状態(そう、ビール広告の缶表面の水滴のように)へ整えていくことも求められるのだ。

 

シャンパンの泡をふわーっと昇らせたい時は塩をひとつまみ、というワザを聞いたことがあるし、ワカメなど味噌汁の具を表面に出したい時も同じく塩を投入、というワザも聞いたことがある。ラーメン撮影でも、まあいろいろな仕込みがあったりする。

 

フード撮影それぞれの現場で、いろいろなワザが磨かれているのだろう。

管理組合取材と千葉らーめん探訪

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定例のマンション管理組合取材。ライターとして参画し、シーズナルで3年目の不動産系PR誌。マンションごとに様々な管理体制、様々な取り組みがある。

 

そして、郊外マンションといえばそのエリアのラーメン探訪も楽しみの一つ。今回は、取材前に1杯、取材後に1杯という理想的ペースで千葉のラーメンを堪能した。

セレクトは石神本。石神チルドレンということもあるが、編集統括を務めていただけに、やはりこの本がベースになるわけだ。

 

まずは栄昇らーめん(京成津田沼駅)。私が初めて編集に携わった石神本2007で初出。掲載当時は日替わりで煮干し味、アゴ味を出す「魚だしらーめん」がメインだったが、現在は「煮干しらーめん」「あごだしらーめん」「節仕込みらーめん」「魚だし塩らーめん」「醤油とんこつ」「東京らーめん」と、6種をラインナップする多彩なメニューがウリだ。

 

迷ったが、「節仕込みらーめん」をチョイス。粘度は高くないのに魚介の重厚感はあるという、秀逸な完成度。穂先メンマもたまらない。

 

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管理組合ライターとして取材を終えた後は、「だんちょうてー」(本八幡)。こちらは2002年創業で、石神本初出時は「かっぱ」という名前。その後、「八幡ダンチョウテー」という名義で掲載された後、現在に至るという。濃口のブラックな醤油ラーメンがメインだったが、店頭看板を見る限り、最近は「濃厚味噌らーめん」「醤油つけ麺」もプッシュ中のようだ。

 

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もちろん、らーめんを濃口でいただく。見た目はブラッキーだが、味わいはまろやか。七輪で炙ったチャーシューも相変わらず香ばしい仕上がりだ。

 

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中堅の域に入りつつある両店だが、変わらないために変わり続けている姿勢は同じだ。また何年か後、実食の機会を楽しみに待ちたい。