寒の入りから寒の明けまで、つまり小寒から大寒までが寒の季節。今年2020年なら1月6日(小寒)から2月4日(立春)までが寒の内ということになる。
そんな寒中の季節こそ、クールな冷やし麺を食べてみようではないか、と思い立って溜池山王へ。こちらには『冷やし中華専門店 HiyaChu』がある。
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2019年2月4日、ちょうど立春にオープンした、その名の通りの冷やし中華専門店。ジャスト1年後の立春、2月4日に移転オープンするというから、寒の内に食べておかなきゃなるまい。
ということで、仕事場からテクテク。渋いビルの地下飲食店街の一角を訪れた。
メニューは「ブラックビネガー」「グリーンソース」のレギュラーに月替わり限定を2種類合わせるという構成。限定の「ウニクリーム」「えびアボカド(和風です)」も気になったが、まずはスタンダードからいっとこう。
オーダーしたのはブラックビネガー。女性店主がスナック然とした厨房でワンオペ奮闘している。大崎さんが「大井町の『ajito』に初めて行ったときの感覚」と書いていたが、まさにそんな感じ。
しばし待って着丼したのがこちら。
NYから逆輸入という触れ込みだったが、それほど無国籍にはシフトせず、冷やし中華の様式を踏まえたルックス。しかし、ヒンヤリ冷涼に食べさせるというよりは、現代まぜそばのモデルを意識している感もある。
楽しいのはパクチー、紫玉ねぎ、オクラ、ミニトマト、ワカメ、ツナチャツネ、半熟味玉、チャーシューと盛りだくさんな具材群。盛り付けにも気配りがなされ、完成形から香り立つ雰囲気は上々である。
個人的な嗜好かもしれないが、ワカメがブーストする冷やし中華感は意外。舐められん。
麺はしっかり歯ごたえある食感で、縮れ具合も絶妙。醤油と酢のきいたタレは量もほどよく、よく絡む。そんなにグイングインと天地を返さなくてもよし。
移転後は寒の明け。新たなスペースで「グリーンソース」、意欲的な限定たちも食べてみたい。
そもそも論に戻って、寒の冷やし中華である。
珉亭@下北沢、萬福@銀座にはグランドメニューに冷やし中華がある。美富士@北千住も通年で提供しているという話を聞いた。
なんて話を麺友の青木健さんに振ると、「浅草のあさひ、三河島のすずきも通年で出しているみたいですね」と即レス。さっそく、冬の冷やし中華巡りへと出かけることにした。
何といっても、冷やし中華といえば外せないのが神保町。
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冷やし中華の元祖として有力なこの店。富士山を模して「四季を彩る」コンセプトの五色涼拌麺を頼むと、「五目そばじゃなくていいのね?」とマダムに聞き返された。通年提供でも、さすがに冬に頼む客は少ないようである。
さて、まとめるにあたって、週プレで取材したときのメモを取り出してみると……この名物冷やし中華、キュウリや焼豚などの具材は「メニューを開発した2代目店主が好んだタバコと同じサイズ」で切りそろえられているという。
十数年ぶりに食べるからか、ややコンパクトに食べやすくなった感もあるが、その伝統で言うなら寸法にも変化はあるまい。この店が冷やし中華を開発したのは昭和8年(1932年)と伝わる。2代目店主はゴールデンバットなどのレギュラーサイズ(70mm)がお好みだったのだろうか。
酸味が効いたツユはさっぱりとしつつ、だけど物足りなさはない絶妙加減。このあたりが歴史に磨かれてきたメニューらしい塩梅だ。
ヒンヤリと麺を堪能し、店を出てすずらん通り商店街をそぞろ歩き。冷やし中華で満足したら、冷やし麺で締めるべし、と次の店へ。
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ここでは外せないのがコレですね、「山形名物 つったい(冷たい)ラーメン」。角氷がトッピングの一角をなす、これぞザ・冷やしラーメンという貫禄。
山形のマルセイしょう油を使って、さっぱりさせるのは山形産りんご100%という本格醸造りんご酢か。シャバッとした冷やしラーメンならではの冷スープだけど、じんわりしみる滋味がある。そして、円空仏のような素朴なラーメンだから、ノミ跡がざっくりくるような全粒粉麺が、よく似合う。
冷やし中華からのつったいラーメンという、神保町北壁に新ルートを開拓した我ら。
『ととこは』山形の日本酒につまみも豊富、じっくり腰を据えて冷やし麺談義をするにはちょうどいい。クラシカルな冷やし中華を萬福で堪能するもよし、町場の中華屋でハートフルな冷やし中華に出会うもよし。次なる厳寒麺ツアーに、話はどんどん転がっていくのであった。
冬の冷やし中華、冷やしラーメンもいいけど、冬の日本酒冷やもいいね。