うちの近くにある酒屋の看板で「コンビニエンス」というショルダーが気になった。
「便利」という意味だけじゃなく、何かひっかかる…モヤモヤしてたがついに思い出した。原秀則先生の浪人マンガの名作『冬物語』のワンシーンで、主人公が「ここならコンビニエンスも近いし便利だよね」的なことを言うセリフがあった。
そうなんだよ、コンビニは昔「コンビニエンス」ゆうてたんだよ!
実家にあるから、今度再読してみるか。書影も、水野真紀、宮崎ますみの映画版も時代だなあ。90年(80年代と90年代の狭間感)の空気。
さてこの『冬物語』、連載されていたのは87~90年だから私にとっては中三~高三というミドルティーン直撃マンガ。予備校生、大学生という農村部にはいない層が繰り広げる恋愛模様。うちの町にもコンビニ的な店はあったが、「ホットスパー」とかいかにもローカル系な店舗ばかり。セブンイレブンいい気分、明るいねあったかいねサンチェーンとか、深夜ラジオのCMで聞いて思いを馳せていた。80年代中葉、地方の一少年にとって「コンビニエンス」は都市カルチャーの象徴であったのである。
で、その「コンビニエンス」問題。
泉麻人氏は、1980年代後半に「コンビニエンス物語」なるルポをいとうせいこう氏と連載していたそうだし、調べてみたら90年には『ウッチャンナンチャンのコンビニエンス物語』(テレビ東京系)なるドラマもあった。『冬物語』セリフもそうだが、バブル期には、まだ「コンビニ」という略称が一般化していなかったことが推察できる。
上記の事例によると、「コンビニ」という略称は90年代初頭から広く使われ始め、95年ごろには定番化していたようだ。4文字短縮で一気に人口に膾炙したイメージのある「コンビニ」だが、1号店が登場したのは1974年のこと。
20年近くかけ、じわじわと生活基盤に浸透していったのだね。