日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

パッケージに見る「麺リフト」研究

西友のカップ麺売り場をリサーチしていたら、PB「みなさまのお墨付き」に、何だかすごいパッケージを見かけた。

 北斎凱風快晴もかくや、という富士山型の麺リフトが圧巻である。

 

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「大盛り焼そば」らしく、麺のムチムチ感がダイナミックに活写されており、思わず唸った。

 

同レーベルの「ソース焼そば」は、シンプルに重心が安定した低層タワー型。浅草十二階、またはヘドラの直立ぶりを思わせる。

 

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最近はカップ麺のパッケージも麺リフトが流行っているのか。麺売り場をさらに物色してみた。

 

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袋めんは、やや上から見下ろした華厳の滝型。フリークのラーメン撮影法の一つ「林撮り」(林撮り詳細は拙稿を参照)とも似ている。

第3回 「情報を食う」の、その先へ――TOKYOラーメンGeeksの今 | M/M memento / moment

 

ズルズルっと麺を啜る己を想像し、思わず手が伸びるというサブリミナル効果をねらったものだろうか。

 

西友PBパッケージは綿密に考えられているようで、バリエも多彩。袋めんパックでは、麺オンザレンゲでのリフト、という珍しいカットも使用されている。

 

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西友PB以外で麺リフトをフィーチャーしているのは日清食品でもあった。

こちら「デカブト」はボリューミーなカップながら、歯ごたえムッチムチそうな太麺をしなやかに流している。

 

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コンビニなどの販促で、人の目線は左~右、右で止まって下段左~右へと動く「Zの法則」というセオリーがある。このデカブトの低い陣形での麺リフトは、パッケージ内でZの法則を体現している、と言えるのかもしれない。

 

日清の麺リフトといえば、外せないのが「どん兵衛」シリーズ。ストレート製法による麺の流れを写し取っている。

 

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私が雑誌の麺リフト画像ではこの人、と推す西崎進也カメラマンが作るような、実に丁寧な麺線だ。西崎カメラマンの料理写真は『TRY』、『おとなの週末』などで見られるので、ぜひウォッチしていただきたい。

 

ちなみに、私が携わっている『TRY』では、麺リフトを通称「麺上げ」カットと呼ぶ。2016年版はぐっと使用率を抑えたが、味噌や濃色のスープなど、麺が見えにくいラーメンの場合は適宜採用している。

 

最も、フードコーディネーターのスタイリングが入るわけではなく、立ち合いライターが手探りで行うため、麺線の整いはそこまでハイレベルなものは要求できない。

 

ただ、一点だけ留意してもらっているのが箸のポジショニングだ。

ごくたまに、箸が手前にきてしまい、麺の流れを断線してしまっている麺リフト画像を見かけることがある。これ、実に残念。

 

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麺の美しさ、質感をできるだけ再現しようというのが麺リフト画像のねらい。

商品パッケージでも、ラーメンガイドブックの誌面でもそれに変わりはないのである。

 

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