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日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

料理写真の小ワザを考える

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都内某所で、終日スペシャルティコーヒー撮影。

ペーパードリップの抽出フローを何十回と繰り返すわけだが、これは私のような立ち会いライターでは務まらない。コーヒー粉にただお湯を注げばいいというわけではなくて、一定の太さの流湯を注ぎ、時間を置いて蒸らし、2投目、3投目と注ぐことで粉をぷくらーっと膨らませなければならないからだ。細口注ぎ口のコーヒーポットを振り、ウルトラ水流のように糸湯を繰りだせる凄腕珈琲職人のお出ましだ。

 

ちなみに、この膨らみは二酸化炭素炭酸ガス。コーヒー豆の香り成分はこの炭酸ガスに含まれている。焙煎後のコーヒー豆は酸化が進み、どんどんこの炭酸ガス、つまり香りが失われてしまう。ガスが発生してペーパー上で綺麗に膨らむということは、豆が新鮮という証しでもあるのだ。

 

ペーパーを伝ってサーバーにちーっと垂れていくコーヒー液。深みのある褐色が美しい……と、おもむろに珈琲プロが持ってきたのはチャッカマン。カチッと着火し、カップの表面をなでていく。

 

なるほど。こうして、液面にぷくぷく浮いた小泡を消していくわけだな。

 

料理写真家の越田悟全さんは、『プロフェッショナルの料理写真』で

 

コーヒーの液面をよく観察すれば、煎りの深い豆だと表面についた脂が液面に浮いているのに気がつくでしょうし、コーヒーの泡の状態に着目すれば時間の経過を心理状態の変化に置き換えたポエジーな表現ができるかもしれない。

 

と語っていたが、今回の撮影は一回性のシズル感よりもオールフラットで同一状態での撮りおろしがマストだ。表面の泡も取り除きたい、ということでチャッカマンのご登場と相成った次第。料理撮影ではライティングの微細な加減が生命線になるが、時には生活シーンではありえない理想の状態(そう、ビール広告の缶表面の水滴のように)へ整えていくことも求められるのだ。

 

シャンパンの泡をふわーっと昇らせたい時は塩をひとつまみ、というワザを聞いたことがあるし、ワカメなど味噌汁の具を表面に出したい時も同じく塩を投入、というワザも聞いたことがある。ラーメン撮影でも、まあいろいろな仕込みがあったりする。

 

フード撮影それぞれの現場で、いろいろなワザが磨かれているのだろう。