人との出会いが旅だから
人との出会いが旅だから 借金してでも行きたいな
とBOSE氏は歌ったが、この5月は旅に終始。
人との出会いあり、良本との出会いもありの皐月であった。
まず、こちら。
以前から誰ぞのブログなどで見かけて気になっていたが、やはりご当地札幌で購うことに意義があるだろう。
札幌のラーメン店主、20人のストーリーが抑制的なトーンで綴られていく聞き書き集。一人語りのスタイルで、インタビュアーは完全な黒子。存在感を消しているようだが、行間に、ほのかにたちのぼってくる、ライターの矜持、ラーメン愛がすごく、好ましい。
札幌で邂逅した古川淳.氏の章が、やはり読まされてしまった。
写真は、店主の厨房風景を静的に切り取って今なお評価が高い、あの石神本2003を思わせる出色の出来栄え。
続いて、こちら。
著者の栗山氏は、駆け出しライターの頃に同じ編集部で仕事したりで、90年代末にいろいろすれ違った方。当時の小学館はライター部屋的な一面があって、編集部で仕事をしたり、拠点にしたりしているライターがいろんな編集部にいた。当然、ライターの横のつながりもできたりしたわけで。一山いくらの兵卒だった私は、いかにもブリバリ働く「ザ・ライター」な栗山氏を眩しく見ていたものである。
それから幾星霜。新聞の三八広告を見ていたら、久々に御名を目に。書店で手に取ってみた次第だ。
この『居酒屋ふじ』は、青春小説のテイを取っているようでいて、破天荒おやじの一代記的な側面もあり、バブルへと疾駆していく東京の焦げ臭い空気感もある。何だか不思議な読中感のある一冊だった。
件の居酒屋は、和田デスクに2回ほど連れていってもらったような記憶がある。ふじという名前は認識していなかったが、「蛇崩のあの店行くか」と、編集者たちが足を向けていたことは覚えてる。
恵比寿のおでん屋台「おゆきさん」とか、当時は名物おやじ、女将の店に連れていってもらうと、丁稚ライターらしくいじられ、あるいは身の置き場に困り。妙な居心地でむずむずしていた気がする。
今行くとまた、違った感慨があるのだろう。
人との出会いが旅であり、店との出会いも旅である。