日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

神保町周遊

 今年の「神田神保町古本まつりオフ」(kohさん主宰)には参加できなかったのだが、事前に下調べをして、アタリをつけていた私。


 神保町でぽっと時間が空いたので、そのアタリをつけてたとこを回遊してみることにした。

 まずは料理関係が充実した悠久堂書店。ここでは玉村豊男の「料理の四面体」を下見にて発見していた。今回はというと……当然、姿なし。
 リサーチ時に見た値付けは400円。同著者の「男子厨房学入門」でボロボロと目から鱗が落ちまくった。ダシ、フォンをパターン化して組み合わせていくという新感覚のスープベース理論。この「四面体」は、さらにその根元たる料理理論が展開されてる、とのことだ。
 新刊書店では、ヴィレッジ・ヴァンガードで見かけたことがあるだけで完黙。なかなか古本屋でも見かけないし、Amazonマーケットプレイスでは950円強という強気価格が幅を利かせている。ぜひともゲットしておきたかったのだが、残念である。

 他にも出物なく
「パンの耳の丸かじり」東海林さだお
パンの耳の丸かじり (丸かじりシリーズ)
を500円で、
「握りの真髄 江戸前寿司の三職人が語る」文藝春秋握りの真髄―江戸前寿司の三職人が語る (文春文庫―ビジュアル版)
を300円で購入。

 丸かじりシリーズは、ソフトカバーで1年1作ぐらい読んでたのだが、現在8本目「伊勢エビの丸かじり」で頓挫中。これぐらいになると、そろそろ読むか、書店に行って買おうと思っても、どこまで読んだか分からなくなってしまって。
 もう順番に読むのはあきらめ……ってことでこの「パンの耳の丸かじり」を抜いたのだが、こちらは11月に出たばかりの最新作にして500円というから、結構なお買い得かと。しかし、リストを見ると22作目。文庫化もガシガシ進んでいるみたいだし、だいぶ出遅れた感がある。
「握りの真髄〜」は94年リリースの文春文庫ビジュアル版里見真三が先鞭を取ったB級グルメシリーズの最後尾ぐらいではないか? 里見真三著の「すきやばし次郎、旬を握る」ラインに連なる、江戸前寿司職人インタビューもの。職人の話を「芸談」として捉えたアプローチは今も新鮮(か?)。聞き書き井田真木子。この人のサクサクっとしたインタビューまとめは好きだ。

 さて、そこそこな満足感を抱えて悠久堂を出、三省堂書泉ブックマートと回ってすずらん通りへ。東京堂のちょい先の中山書店。
 以前の下調べの時は戦前のアサヒグラフが500円でズラリと並んでいた。これが欲しかったのだが、何と結構残っていたのでうれしき。昭和十三年の「南支進撃特報」、昭和十四年の「支那事変画報」と題された2冊を購入。まあどちらも500円。
 なかなか保存状態は悪くない。紙質もよいのだろう。やはり米英戦突入の前だし。「全支制空揺ぎなし」と題されたグラフでは、第六次重慶爆撃をリポート。これが六十数年後、スタジアムのブーイングの一因となったわけか。
 他にも、焼夷弾の恐怖、空襲火災の危機をさんざんアピールしているものなど、結構興味深い記事が並ぶ。空襲開始数年前からねえ……まぁほとんど生かされなかったようですが。

 戦前の雑誌といっても、やはりモダンな書体、きっちりとした割付でそんなに古びた印象はない。もちろん、右から読む横書き見出しばっかりだが、カメラや映写機、真空管といった最先端AVの広告に関しては、左からの横書き。これ意外。
 やっぱ欧米由来のものに対するカッコよさイメージは、まだまだこの昭和十三〜十四年あたりは残っていたのかもしれない。