日刊ササボン

雑食系ライター/エディター・佐々木正孝プレゼンツ ラーメンと仕事あれやこれやの日々

啜る快感、昆布水つけ麺

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『Ginger Noodle Spot 角栄』にて、初の「ツケメン」いただきました。

新潟長岡生姜醤油ラーメンの「ラアメン」も個人的五ツ星ですが、

ツケメンがまた、たまらない仕上がり。

 

麺が昆布の水出汁に浸かって出てくる昆布水つけ麵。

この水出汁が超・粘度たっぷりで、啜り上げる時のズルズルッ!

という快感がたまりません。ヌーハラだか何だか巷間言われているようですが、

これは啜り上げてこそ、魅惑の味世界が愉しめるわけで。石神氏が昆布水つけ麺を初めて紹介した『石神秀幸 神ラーメン2012』の『らぁ麺屋 飯田商店』テキストから引用してみましょう。

 

ツユに浸せば、未知の扉が開かれる。

水出汁の粘度が強いのでツユと一体化せず、昆布と鶏の味がどちらも失速せず加速したまま飛び込んでくる。麺を勢いよく啜ると水出汁とツユがホイップされて味が程良く溶け合い、泡が粘膜をなぞり未体験の心地良さ。

 

脳内でまた思い出してしまった……。

これまで何軒かで昆布水つけ麵を堪能してきましたが、

うまみの掛け算相乗効果はもちろん、粘度の高い昆布バブルが醤油つけ汁と混ざり合いながら口中にスライダーする、あの昇天のひと時がたまりません。

 

男子はやっぱりチュルチュル麺啜るのが好きなのは、

フロイト言うところの口唇性欲が……あるのかどうかわかりませんが、

とにかく快楽の極み。

 

 

 

 

 

「コンビニ」という略称はいつから使われているのか

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うちの近くにある酒屋の看板で「コンビニエンス」というショルダーが気になった。

 

「便利」という意味だけじゃなく、何かひっかかる…モヤモヤしてたがついに思い出した。原秀則先生の浪人マンガの名作『冬物語』のワンシーンで、主人公が「ここならコンビニエンスも近いし便利だよね」的なことを言うセリフがあった。

 

そうなんだよ、コンビニは昔「コンビニエンス」ゆうてたんだよ!

 

「冬物語 原秀則」の画像検索結果 「冬物語 原秀則」の画像検索結果

実家にあるから、今度再読してみるか。書影も、水野真紀宮崎ますみの映画版も時代だなあ。90年(80年代と90年代の狭間感)の空気。

 

さてこの『冬物語』、連載されていたのは87~90年だから私にとっては中三~高三というミドルティーン直撃マンガ。予備校生、大学生という農村部にはいない層が繰り広げる恋愛模様。うちの町にもコンビニ的な店はあったが、「ホットスパー」とかいかにもローカル系な店舗ばかり。セブンイレブンいい気分、明るいねあったかいねサンチェーンとか、深夜ラジオのCMで聞いて思いを馳せていた。80年代中葉、地方の一少年にとって「コンビニエンス」は都市カルチャーの象徴であったのである。

 

で、その「コンビニエンス」問題。

泉麻人氏は、1980年代後半に「コンビニエンス物語」なるルポをいとうせいこう氏と連載していたそうだし、調べてみたら90年には『ウッチャンナンチャンコンビニエンス物語』(テレビ東京系)なるドラマもあった。『冬物語』セリフもそうだが、バブル期には、まだ「コンビニ」という略称が一般化していなかったことが推察できる。

crd.ndl.go.jp

 

 

上記の事例によると、「コンビニ」という略称は90年代初頭から広く使われ始め、95年ごろには定番化していたようだ。4文字短縮で一気に人口に膾炙したイメージのある「コンビニ」だが、1号店が登場したのは1974年のこと。

 

20年近くかけ、じわじわと生活基盤に浸透していったのだね。

 

うなぎラーメン

アプリ「ラーメンGoGo」のミーティングに参加した時、特典として珍袋麺のつかみ取りがあった。

 

なぜかその場の最年長ということで先陣の余禄に預かった私が手に取ったのは、この「うなぎラーメン」と「トマトラーメン」だった。

 

インスタント忌避の我が家ではなかなか食べる機会なかったが、

深酒翌日家人留守子供看病台所立飯

という、格好のシチュが到来。

 

福岡柳川の魚問屋夜明茶屋謹製、蒲焼風スープが陽の目を見る時が来た。

 

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カップ麺にはいろいろ一家言あるが、袋麺といえばサッポロ一番しょうゆ、マルちゃん冷しラーメンぐらいにしか拘泥のない私である。

 

うなぎラーメン…

際物かと先入観でサッと作ってキッチンで平らげる。

 

粉スープがサッポロ一番の3倍ぐらいという盛り、別添え山椒もどん兵衛の倍くらい。

 

濃そうだなーと思ったが、あら不思議に嫌味のないコク。かけそば状態でも美味しくいただけたのは、乾麺に合うウナギアロマがふわっと香ったから。

 

蒲焼のにおいをおかずに飯が食える、江戸っ子かと。うなぎてぇのは、いつ匂いを嗅いでもいいもんでございますな。

 

 

秋冬のライター仕事まとめ

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『現代国語例解辞典 第五版』。

この秋冬の目玉仕事といっても、実際に執筆したのは昨年の秋。数年がかりでフィニッシュする辞典ならではのスパンですな。担当したのは、コーパスを活用した、辞典内の言葉コラム255本。

コーパスを活用というのは、世の中の出版物で「空揚げ」「唐揚げ」どちらが多く使われているか、「ラーメン」を紹介するときには「醤油ラーメン」「味噌ラーメン」「塩ラーメン」「ご当地ラーメン」どの表記が多いのかとか、まあそういうことです。ちなみにラーメンはすごく意外な結果。紙の辞書の将来あれこれ言われていますが、皆さんも現例解、引いてみてください。

 

雑誌ものでは、これか。

うかうかしていたら、もう次の号が出てしまったw

久々に携わったDIME誌。麺なしラーメンのトレンドをコラムにて。

秀ちゃんラーメンのラーキャベ、舎鈴のつけ肉、立川マシマシの豆腐を取り上げ。

識者にはフードジャーナリストの山路力也さんにご登場いただきました。

 

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今シーズンは、晋遊舎の完全ガイドシリーズは少なめの参画。

『保険完全ガイド』は、ここ最近やってる金融・保険ものの集大成。このムックのクレジットを見たエージェンシーから問い合わせがあって金融コンテンツマーケティングやったりと、いろいろ広がりがある仕事でもありました。

 

『ネット通販完全ガイド』は沢田さん、小越さん、風間さんに実食いただいてのお取り寄せプレミアム商品特集が印象的。風間さんスタジオで帰りしなに、東京震度7緊急地震速報誤報に震撼しましたっけ。

 

『旅行完全ガイド』は毎度おなじみ、浅沼さん差配。このシリーズも7冊目ぐらいになるんだっけか? ホテル評論家瀧澤さんに取材した「ホテルのお得な泊まり方」などの企画。

 

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PR誌、業界誌系では、マンション不動産ものが一回休み。元宝島~リクルートの後藤氏が編集長として降臨したCHINTAI『わんだふるオーナーズ』の連載2回目。賃貸物件の「窓」をテーマにした巻頭エッセイ。六義園ビューのお部屋。私が東京に出て初めてのデートが六義園だっただけに、いろいろ感慨深い。あの子は元気かしらね。

 

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ドカンとやって量も質も傾注したのが各種オウンドメディア。もう弊社のキャッシュポイントの一つの柱になっている気がする。署名入りあり、佐々木圭一さんを取材したW佐々木ものあり。

パートナーが売却に反対......どう足並みをそろえたらいい?

 

年金受給額を42%増やすための「定年後起業」という選択

 

いくら稼げる? フリー素材モデルの経済事情にフォーカス!

 

 それから、これもレギュラーでやっているWebコラムもの。企画創発あり、恋愛抒情ひねり出しあり。ライター頭をこねくり回して今日もまた、日が暮れるというわけで。

 

  • スゴレン・オトメスゴレン 恋愛コラム執筆

鋭い指摘にドキッ!「内なる浮気心」を見破った彼女のセリフ9パターン

 

 

パッケージに見る「麺リフト」研究

西友のカップ麺売り場をリサーチしていたら、PB「みなさまのお墨付き」に、何だかすごいパッケージを見かけた。

 北斎凱風快晴もかくや、という富士山型の麺リフトが圧巻である。

 

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「大盛り焼そば」らしく、麺のムチムチ感がダイナミックに活写されており、思わず唸った。

 

同レーベルの「ソース焼そば」は、シンプルに重心が安定した低層タワー型。浅草十二階、またはヘドラの直立ぶりを思わせる。

 

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最近はカップ麺のパッケージも麺リフトが流行っているのか。麺売り場をさらに物色してみた。

 

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袋めんは、やや上から見下ろした華厳の滝型。フリークのラーメン撮影法の一つ「林撮り」(林撮り詳細は拙稿を参照)とも似ている。

第3回 「情報を食う」の、その先へ――TOKYOラーメンGeeksの今 | M/M memento / moment

 

ズルズルっと麺を啜る己を想像し、思わず手が伸びるというサブリミナル効果をねらったものだろうか。

 

西友PBパッケージは綿密に考えられているようで、バリエも多彩。袋めんパックでは、麺オンザレンゲでのリフト、という珍しいカットも使用されている。

 

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西友PB以外で麺リフトをフィーチャーしているのは日清食品でもあった。

こちら「デカブト」はボリューミーなカップながら、歯ごたえムッチムチそうな太麺をしなやかに流している。

 

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コンビニなどの販促で、人の目線は左~右、右で止まって下段左~右へと動く「Zの法則」というセオリーがある。このデカブトの低い陣形での麺リフトは、パッケージ内でZの法則を体現している、と言えるのかもしれない。

 

日清の麺リフトといえば、外せないのが「どん兵衛」シリーズ。ストレート製法による麺の流れを写し取っている。

 

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私が雑誌の麺リフト画像ではこの人、と推す西崎進也カメラマンが作るような、実に丁寧な麺線だ。西崎カメラマンの料理写真は『TRY』、『おとなの週末』などで見られるので、ぜひウォッチしていただきたい。

 

ちなみに、私が携わっている『TRY』では、麺リフトを通称「麺上げ」カットと呼ぶ。2016年版はぐっと使用率を抑えたが、味噌や濃色のスープなど、麺が見えにくいラーメンの場合は適宜採用している。

 

最も、フードコーディネーターのスタイリングが入るわけではなく、立ち合いライターが手探りで行うため、麺線の整いはそこまでハイレベルなものは要求できない。

 

ただ、一点だけ留意してもらっているのが箸のポジショニングだ。

ごくたまに、箸が手前にきてしまい、麺の流れを断線してしまっている麺リフト画像を見かけることがある。これ、実に残念。

 

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麺の美しさ、質感をできるだけ再現しようというのが麺リフト画像のねらい。

商品パッケージでも、ラーメンガイドブックの誌面でもそれに変わりはないのである。

 

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